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久々の外出

1 月 21st, 2019

この道の向こうが家だけど、「ボク帰りたくない」と抵抗するギャビ。

すぐ折れる甘い私。

こういうのは犬にとって良くないそうだが、いいんだ。

私は月に一度、かつての恩師を山梨の老人施設に奥さん共々訪れている。

きのう87歳の奥さんは、東京からはるばるシニアカーという手押し車を使いながら、塩山駅までやってきた。

奥さんの頭の中には、エレベーターのある駅がほとんど入っているそうである。

長い階段さえなければ、どこにでもこの手押し車を使いながら行けるからだ。

きのうも背には登山用のリュック、手押し車付属のカバンの中にも荷物がたくさん入っており、元気いっぱいで改札口に現れた。

同年の老人の中には、この手押し車がみっともなくてイヤだといい、オシャレな杖を使っている人がほとんどだそうである。

そのため無理をするのか転んで骨折し、ほとんど寝たきりになってしまった人もいるという。

トシをとって歩行の自由を補助してくれるものがあったら、私は迷うことなく見栄より格好悪さを選ぶなあ。格好悪いとも思わない。

以前、石垣の上から飛び降り、靭帯をケガした私は、スーパーマーケットのカートに体重を預けながら買い物ができてとても楽だった。

カートごと家に持って帰りたいくらいだった。

このシニアカーは本当によくできていて、段差のあるところで前輪を持ち上げる際も、軽いのですぐ越えることができる。

きめ細やかな技術が随所に見られ、これを設計した人に会ってお礼を言いたいくらいだ。

3月に89歳になる先生は訪問をとても喜んでくれ、今回は私をフルネームで呼んでくれた。

以前は“八ケ岳のオネエサマ”だったけれど。

先月もお会いしているのに「キミに会うのは何十年振りだろう?」とおっしゃる。

「ワタシ老けました?」と言うと「イヤイヤまだ娘のままだよ」と。

私は嬉しいのか悲しいのか複雑な気持ちになった。

「キミは何歳になったの?」とお尋ねになるので「今年の5月72歳になります」と答えた。

すると「ええー!ボクが72歳なのに不思議だなあ」とおっしゃる。

「そうです。時間というものは不思議です。それに先生の時間と私の時間は違うんですよ」と申し上げておいた。

奥さんが東京から持って来た古い膝かけに「贈 日本文芸家協会」という刺繍文字を発見した先生は「これは何?誰の?」とつぶやいた。

奥さんが「貴方のよ。忘れたの?」とバナナの皮をむいて手渡すと「アリガト、バナナはうまいなあ〜」と膝かけにはもう関心がなく満足そうであった。

やっぱり時間は不思議だ。

そして先生はいいトシの取り方をしていると思った。

春になったら諏訪湖の桜を眺めながら、この手押し車で湖沿いの周遊コースを歩きましょう、と奥さんと約束した。

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