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スミレによせて

5 月 11th, 2019

長かった連休も終わって、ここは今一年中で一番美しい時である。

いたるところに咲くスミレを毎年楽しみにしている私であるが、村の農家のおばさんに言わせると、「こんなもんは雑草だから生やしちゃあダメだよ」ということであった。

それでも構わず生えるがままにしていたら、どんどん繁殖して他の植物を駆逐しはじめた。

こんなカワイイ顔していつの間にか庭を占領したのね。

おとなしいフリしてホントは“したたかな女”みたいね。

こういう女に男は弱いんだよね、男ってバカね、などとつぶやきながら花を摘んでテーブルの小さな花瓶に活けた。

まだ学生の頃、寝起きで牛乳とあんぱんの至福の時を味わっていた。

ついでにレコードでドイツリート集から歌詞の訳を読みながら、モーツアルトの『スミレ』を聴いていた。

今レコードなんて若者は知らないだろうなあ。

以下は強烈におぼえている『スミレ』の内容である。

牧場にスミレが咲いていた。

そこに羊飼いの娘が現れた。

スミレは少女に摘まれて、胸に抱きしめてもらいたいと願った。

やってきた少女はスミレに気づかず憐れなスミレを踏みつぶしてしまった。

スミレは力尽きたが本望だった。

あの人に踏まれて死ねるのだから!

と、大体このような内容だった。

そこへ友人が、付き合っていた男に別れを切り出されたといってションボリとやって来た。

そしてため息まじりに「愛ってなんなのかしらねえ」と青臭いことを言った。

そこで私は読んでいた『スミレ』を「これよ、これ!」と言って友人に読ませた。

彼女は私の頭をひっぱたいて大怒りで出て行った。

ああ私も「スミレ」のような恋をしてみたかったなあ。

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