1月6日
寒々とした、しかし稟とした晴天である。
同じ長野県といっても広い。
北信は連日大雪に見舞われているが、ここ諏訪地方は中南信に当たる。
従って雪は降っても少しだけ。
この雪も年末に降ったものが、寒いので溶けずに残っている。
ここに住んでいると神々しいように美しい、青い空と雪景色に遭遇することがある。
そんな時それを描写するだけの言葉をもたない自分をふがいなく思う。
しかし一方でこうも思う。
その美を言語化した途端、それは実体と大きくかけ離れてしまうのではないかと。
だからその現象は現象のままに私の脳裏にとどめておこう、とも。
私が5歳のとき、家から遠く離れた河原の土手の枯れ草の中に、小さな青色の草花を発見したことがある。
ひとめ見てその青さに虜になった。
その後、高校生になるまでその花を探し続けたのであるが見つけることができなかった。
そしてやっとその花の名前を知ることになる。
「ホタルカズラ」絶滅危惧種である。
図鑑で調べたそれは標本化され、咲いていた場所と時から引き抜かれた知識であり、お粗末な写真と共にその植物の一断面に過ぎなかった。
私の青い花の実体とは大きくかけ離れたものだった。
その時の私は科学の客観性というものに疑いをもった初めだった。
あの時、5歳の時、私はあの青い花と確かに一体になっていた。
そういった主客に分かれていない状態こそが真実なのだと思う。
これからは八ケ岳の「自然」をもう語らず、ひとり静かに享受しよう。
そろそろ冬休みが終わる孫が、ゲーム機もタブレットも母親にとりあげられてふてくされている。
ギャビを撫でながら自分で自分を慰めていたが、そのうち「仕方がない、本でも読むか!」といって新たな楽しみに向かって行った。
私だって子ども時代にこのようなものがあったら、本など読まなかったに違いない。