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大糸線電車の1日旅(2)

9 月 15th, 2021

南小谷に着いた。

駅の横を、まるで翡翠のような色をした急流「姫川」を眺めながら、その先の糸魚川、日本海へと思いを馳せる。

村内をぶらぶらしていると小谷村資料館に出た。

入り口で3館共通の入場券500円を払うと、今時珍しい日本手ぬぐいまでくれた。

ここで展示品や説明書きをじっくり読んでいたら、面白いものに出会った。

白っぽい布でできている手縫いの背広だ。

説明書きを読んでいくと、それは圧倒されるような力強い庶民の物語であった。

深い雪に閉ざされる山間の小谷村は貧しく、電気が引かれたのもラジオが聞けるようになったのも、大正の終わりから昭和の初期ということだった。

村内のある若者がめでたく婿入り先が決まったものの、婚家に着ていく晴れ着がない。

そこで母親は自分で手作りすることを決心する。

まず何人もいる息子たちに、イラクサを大量に採ってくるよう命ずる。

何回も何回も自生地に通って、背負子に山のように乗せて運ぶのである。

それを母親がイラクサのトゲだらけの皮を剥き、叩いて繊維を取り出して煮出し、さらに糸にしてイラクサの布を織る。

やっと服に仕立てることができ、無事婿入りを果たすという話であった。

この写真はその服を復元したもの。

これを読んで私は幼き日に読んだ、アンデルセンの童話『野の白鳥』を思い出した。

魔女である継母によって、国を追われ白鳥に変えられてしまった11人の兄達の魔法を解くため、妹のエリサはイラクサの棘で血だらけになりながら、経帷子を11枚編むのである。

その間一言も口をきいてはならないのだ。言葉を発したが最後兄たちは死んでしまうのだから。

逃れてきたよその国の洞窟で、必死になってカタビラを編むエリサを、その国の王が見初め連れて帰る。

しかし魔女だという罪を着せられてしまう。火あぶりの刑に処される直前まで一心にカタビラを編むエリサ…。

最後の11枚目を編んでいる途中、刑吏がエリサの腕を掴んで引き立てる。

その時11羽の白鳥が舞い降りエルサを取り囲む。エリサがカタビラを兄たちに投げかけるとたちまち白鳥は美しい王子の姿になる。

でも最後の一枚はまだ袖が出来上がっていなかったので、一番下の兄の腕は白鳥の羽のままだった。

幼い私は感動のあまり泣いてしまった。

「ワタシもニイちゃんたちに何かあったら、エルサのようにきっと助けてあげるんだ」と本気で思ったものである。

その後の私は助けてあげるどころか、兄たちには助けられてばかりいたが。

さてアンデルセンのエルサも、イラクサで息子の服を作った母親も、愛と自己犠牲の尊さ美しさを示してくれた。

資料館は展示されているものを“見る”だけではなく、解説を読んでこそ、その面白さもわかるというものである。

あっという間に時間が過ぎてしまい、急いで駅に向かった。

帰りの松本行きの電車の中ではひたすら読書をし、松本から「すずらんの里」までの約1時間も本を読んで居眠りもしなかった。

この本のおかげで私は長い惰眠から覚めたような気がした。

ワンデイパス最高!

家にいると雑用に追われたり、色々誘惑があったりしてなかなか集中して本を読むことができない。

次はすずらんの里→松本→長野から豊野、飯山、越後川口までの旅をする。

昨日のブログを読んだヨメゴのおチエが「ケイコサンずる〜い!」と言ったので、この次は車両は別々、昼食は一緒、と言うスタイルでおチエも連れて行くか。

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