5月8日
5 月 8th, 2022
待ちに待った5月の美しいときがやってきた。
一人で家の周りをうろついてみる。
いつ植えたものか定かではないガマズミが良い香りを放っている。
ひと枝折って胸のポケットに挿し、歩きながら存分にその香りを楽しむ。
見上げればクラブアップルの花と桂の若葉が重なり合って、ステキな空をつくっている。
足元には、はるか昔に植えたチューリップが思い出したように咲いていて、私の記憶を過去へと誘ってくれる。
あの頃は庭作りにも情熱を傾けていたなあ、それが今はどうだ、最低限のことしかやっていないなあ、と反省する。
日当たりの良い庭の片隅に、自然に生えてきた濃い紫色のスミレ。
山路来て何やらゆかしすみれ草
芭蕉の句だ。
明るい陽だまりに咲く「すみれぐさ」、さぞかしこの花に芭蕉も旅の疲れを癒やされたことであろう。
中学生のとき、「すみれぐさ」ではなく「すみれそう」の方がいいのではないかと言った、生意気で勉強のできる男子生徒と論争したことが思い出された。
「すみれぐさ」でなくてはならない。芭蕉の謂いもそれだ。
しゃがみこんでしばらく見入って(魅入って)いた。
立ち上がろうとしたら足が痺れていて後ろにひっくり返った。
八ヶ岳にはスミレが多く、当方の庭にも5種類のスミレが咲いている。
だから5月になるとこの花に会えるので嬉しい。
戻ると「どこへ行っていたの?」という顔をしてギャビが不満そうだった。