12月25日
きょうはクリスマスだ。上の写真は6年前のもの。
今年はクリスマスをスルーした。
ケーキもなく料理も普通の家庭料理。
息子は真面目な顔をして「クリスマス無しなんて生まれて初めてかもしれない」と言った。
彼の父方の祖父母はクリスチャンだ。だから物心ついた時からクリスマスは特別なのだ。
でも、もう嫌なのだ。私は。
日本のキリスト教信者は、人口の1%に過ぎない。
それでも現在多くの人たちはクリスマスを祝う。
果たしてイエス・キリストが12月25日に産まれたのかどうかだって分らないけど、商業主義に乗せられたクリスマスは、肝心のイエス・キリストの存在を忘れている。
日本のクリスマスはキリスト教徒の祝祭としてではなく、ハロウィンや恵方巻きなどのように、国民性に合う独特のイベントとして成立している。
要は“洋式お祭り”なのだ。
隣のおばさんに言わせると「愛と感謝の祭典よ」ということである。
なんでもいいけど、その祭典のための準備なんか金輪際ゴメンだね。
でも、孫が小学生の時のクリスマスの写真を見ていると、ちょっぴり心が痛む。
これぞクリスマスにふさわしい絵。
この絵はフランス古典主義の画家「ラトゥール」の作品で『大工聖ヨセフ』という。
ロウソクをかかげ持っているのは、もちろん義父ヨセフの息子である子供のイエスだ。
40年以上前、ルーブルで本物のこの絵に出会ったとき衝撃を受けた。
画面全体を包み込むロウソクの光は、静謐で神秘的だった。
イエスは義父ヨセフの仕事を照らしており、お互いの精神的なつながりがロウソクによって象徴的に表されていた。
私は、そこに書かれていた英語とフランス語の説明を夢中で写し、帰ってから辞書を引き引きラトゥールとこの絵について調べた。
ラトゥールはフランスの17世紀の画家であるが、近年まで忘れられた存在だった。
20世紀になって再評価された画家である。
この『大工聖ヨセフ』は彼の代表作といえる。
一方で正反対の「詐欺師たち」を描いた傑作もある。
12月23日
きのう降った雪を、今朝はおチエとせっせと掻いた。
駐車場、家の前の道路と、それぞれ総出でやる。
いつの間にかできたこのルール。
うちは中学生の孫も含めて4人いるから大きな戦力だ。
だから出てこられない人のところもやる。
こういった助け合いは清々しい。
今日は一日中マイナス8度だった。
道は凍ってカチカチだから、今日もクルマが2台側溝に落ちていた。
ここは下り坂が急だから落ちているのはいつも左側だ。
こんな日の運転は最大の注意を払わなくてはならない。追い越しなどもってのほかである。
私はこんな日だからこそクルマを運転する。練習のつもりで。
スーパーマーケットまでの15分間の緊張がたまらない。
ギアを落とし絶妙なブレーキ捌きで下る。
43年間毎冬凍った道を運転しているが、まだ一度も落としたことはない。
いつまでできるかなあ。
寒いのでギャビに防寒着を着せた。
嫌がる風でもない。
12月20日
毎朝マイナス10度以下の日が続いている。
ギャビはこの寒さを嫌がる様子もなく、元気に歩いて排泄を済ます。
戻るとワンチュールまぶしのドッグフードをペロリと平げ、家族のご飯を少しずつもらう。
それからデザートのリンゴをシャクシャク音をたてて食べ満足する。
彼は不思議な犬だ。仔犬のときから食べ物を丸呑みすることはなく、なんでもよく噛んで食べる。
だから少々大きめのリンゴの片でも、喉につまらせるようなことは決してない。
イモウトは学校、ネエは出勤、ニイも仕事部屋に引き上げると、ギャビはやっとコタツに入って寝始める。
私もギャビもお互い幸せな時間である。
私は椅子式のコタツに入り、ストーブを背にしているので全く寒くない。
ただ眠くなるのが困る。
でもそんな時は誰に憚ることなくウツラウツラする。これが気持ちいいのなんのって!
若い頃は嫌だと思った両親の居眠りの姿が浮かんできて、懐かしく思う。
いつの間にか私もそんなトシになっていた。
起きていることだってあるんだよ。
12月19日
昨日は雪だったので、終日雪かきに追われた。
まだまだこの作業ができることを実感した。
前の家の一人暮らしのおじいさん(といっても私とほとんど同年)も雪かきに出てきた。
この人は4ヶ月前ガンの手術をしたばかりで体調が充分ではない。
そこで「道路と駐車スペースは私がやっておくから、自分のところの出入り口だけやればいいよ」と伝えた。
すると「アネゴ、すまないねえ」と言われた。
なにもモノを作ったり、子供を作ったりするだけが生産的なことではない。
行為という生産性だってあるのだ。
それにしても今日は寒い。
朝6時すぎの気温はマイナス11度だった。
それでも接骨院に出かけた。
道路がカチカチに凍っていて側溝にクルマが落ちていた。
こんな日に・・・・心底気の毒に思う。
昨日も林に突っ込んだクルマがあり、警察の車両が来ていた。
このような道路では、私は決してバックミラーを見ない。急かされないために。
それでも追い越していく都会ナンバーのデッカイ4輪駆動車がいる。
「地獄に堕ちろ」と呟く。
ギャビはこの寒さをものともせず、雪を蹴散らしながらよく歩く。
この分では17歳までいくかもしれないと、ひそかな希望を抱くのだが、いやいや今日だけをお互い大切に生きよう、とそんな希望は打ち消す。
12月15日
夕方の散歩は4時と決めている。
フタリ仲良く氷と雪を踏みしめて歩く季節がまたやってきた。
寒いので足早に歩きたいのだけれど、滑るからそこは慎重にやらなければならない。
緊張すると寒さも忘れる。
ギャビの斜頸はすっかり治ったようだ。
このまま弱ってしまうのかと思っていたが、彼は以前と変わらない。
やはり雑種は強い。
それでも少しずつ衰えていくのだと思うと愛おしさが募ってくる。
今日、外気温はプラスにならなかった。
ものみな枯れて、大地は生命を隠してしまったけど、春にはムクムクと緑が吹き出す不思議を思わずにはいられない。
こんな凍りついた土の中にはどんなドラマがあるのだろう、と雪を蹴りながら思った。
暗さがはらんでいる未来を想像するのはいいものだ。
希望なんて信用していないけど、植物が与えてくれる希望はいつだって私を励ましてくれる。
3ヶ月100日を私も頑張ろう。