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ジャン・フランソワ・ミレー

種をまく人/ミレー.jpeg

 先日山梨県立美術館に友人3人と行ってきた。ここにはミレーの作品が何点か展示してある。彼女たちはミレーの大ファンである。そして民藝好きでもある。ミレーは農民画家と言われる通り『種蒔く人』『晩鐘』『落穂拾い』など静謐で敬虔な祈りのような絵を残している。そんな画風が友人たちの心をとらえているようだ。
 ミレーは最初肖像画家として出発した。しかし絵は売れず不遇な時代を送る。その後パリから離れたバルビゾンの田舎に移り住む。そこで農民たちや羊飼いの働く様子を描き人気が出る。
 ミレーの評判を聞いたローマ教皇ピウス9世は、自分の列車の礼拝室のために《無原罪の聖母》を注文する。しかし出来上がった作品を教皇は受け取るのを拒否したそうだ。その説明書きを読んだ私は笑ってしまった。聖母の顔がまるで農婦のようだったから。私も決していい作品だとは思わなかった。友人たちは「これでこそミレーよ」と擁護していたけれど。

ml110.jpeg
 ミレーは労働にいそしむ農民の姿を共感をもって描いた「農民画家」と見なされているが、農民の絵だけを描いたわけではない。ミレー最後の作品(絶筆)は「深夜の野鳩狩り」である。野鳩は当時の人々にとって大変なご馳走だった。(今もフランスではそうらしい)。
 松明を灯し目眩しをかけ、棍棒で撃ち殺す。そんな子どもの頃の”野鳩狩り”の話が強烈な印象として残り、その暗いイメージがミレーにはずっと潜在していて、時折りそれが脳裏をよぎる、または夢に出てくる。死期を悟った画家は、どうしてもそのイメージをカンヴァスに表現したかったのではないだろうか。画家自身の心の奥底に潜む「闇」と「怖さ」を感じる。恐ろしい絵であるけど傑作である。絶筆を見るとその人の画業と力量がわかる。やっぱりミレーは大した画家だ。

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