この地の5月は一年中で最も美しい。こんな罰当たりな私でも、このような世界を与えてくださった造物主に感謝したくなる。この柔らかな緑の中を歩いていると、草木と私が一体化するような気がしてくる。当然つまらない自我は消え去り所有の欲望も無くなっていく。これはあながちトシのせいでもあるまい。季節が新しくした明るい樹々や鳥の声、そして足元の可憐な草花。 わたしは自分が単純な この世の形象のひとつであることを喜ぶ。
まだ明るい夕方、池のほとりのベンチに座って水面を眺める。幸せでもなく不幸でもない不思議な感情に満たされて去り難く、しばらく座っていた。
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