それほど寒くない日が続いているので散歩することにした。道路に雪も残っているし日陰はその雪が凍ってカチカチだから滑らないよう用心しながら歩く。久しぶりに自然文化園に行ってみた。まずは私が大好きなセイヨウボダイジュに挨拶しなくては。この木の芽吹きは一番遅いけど夏には素晴らしい木陰を提供してくれる。シューベルトの歌曲『冬の旅』の5番目にある「菩提樹」はこの木のことだ。恋に破れた若者が旅立つ時に、以前は町の門の前にある菩提樹の木陰で甘い夢を見ていたことをなつかしむ歌。若者が町から出て行く時は葉っぱ一枚つけていない厳しい裸形の姿だったことだろう。誰もいないことを確かめてうろ覚えのドイツ語で歌ってみる。悲しいかな、音程が高くなるともう声が出ない。何だか嗚咽しているみたいだった。(そんな気は毛頭ないけどね)誰にも聞かれなくてよかった。
Comment on this article
コメントはまだありません。
Send comments