当地にもようやく遅い春がやってきた。コブシ、桜、花桃が咲き、すぐそれを追うようにモクレン、レンギョウ、スモモが咲き誇る。これから6月までは花木が次々に咲いて楽しませてくれる。年寄りになると山川草木、natureとしての自然にますます心惹かれるようになる。いやもうそれしかないのだ。もう一つ付け加えるならば呪術的なものを除いた宗教心とでも言おうか、そんなありがたい気持ちにおのずから導かれるようになる。物欲は失せるが向学心だけはますます湧いてくる。皮肉なことに若い時はちっともそれが起こってこなかったなあ。
青紫のプルモナリア、黄色い福寿草、どちらも寒冷地で美しく咲く草花だ。雪の中から力強く咲いて冬の終わりをつげてくれる愛しい植物だ。
言わずと知れた水芭蕉。以前、鬼無里に水芭蕉を見に行った時、そこには場違いな男子高校生の一群がいた。その中のひとりが湿地全体に咲く水芭蕉を見て「一面トイレットペーパーが転がっているみただなあ!」と言った。あのくらいの年齢の男女は面白い。彼らを見ていると、私の中から永遠に失われてしまったものを提示されたような気がする。とはいえ無知で恥ずかしい青春時代に戻りたいなんて露ほども思わない。
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