本当に王子様みたいな端正な姿形をしたプリンス君が来てくれました。飼い主さんはきっと「私の王子様」という意味を込めて命名なさったのでしょう。どう見ても12歳には見えません。活発に動き回るし、それに抱っこもさせてくれました。疲れて飼い主さんの腕の中でウトウトする姿は王子様というより赤ちゃん。
今は赤ちゃんも犬もこの腕に抱くことはなくなってしまった私だけど、こうしてプリンス君を抱いてみると以前の幸せでもあり苦痛でもあった日々が甦ってきたような気がした。かつて赤ちゃんだった息子が今や中年過ぎのオヤジになり、おんぶや抱っこしてきた孫娘は身長170センチを超え、どちらも抱くことはできなくなってしまった。そして最愛の犬ギャビは17歳で私の手から消えた。そうであっても今の私が不幸で寂しいということでは決してない。現象世界は常に変化し続ける。この世界で起こることはいつかは消滅する。私もいずれまた。
ギャビとよく歩いた川沿いの小径。今年もヤマザクラが満開を迎えた。この道を歩いてギャビとの楽しかった日々を思い出すとしよう。真の対話とは相手が死者となってから初めて始まるという。私は両親や兄、そして死んだ犬たちと何を話そうか。手始めにギャビと。「ギャビちゃん、うちの子になってどうだった?」「うん、まあまあだったね」ということだった。
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